こんな日本に誰がした
2026年10月15日
米国の文化人類学者ルース・ベネディクトが『菊と刀』を著したのは、敗戦の翌年1946年のことだ。日本人を律するのは内なる良心より世間の目だとして、西洋の「罪の文化」に対し、日本を「恥の文化」と名付けた。体面、面子、世間体―。恥とは他人の批評に対する反応だ、と説いた▼それから80年。週刊新潮(10月15日号)が「こんな日本に誰がした」と嘆いている。スマホを片時も手放さない人々や、ぬいぐるみと旅する「ぬい活」、店員に横柄な態度を取る客…。要は、人目を気にしない人たちである。評論家の古谷経衡氏は「現代人からは、恥の感覚が消滅してしまったのでは」とあきれる▼では、こちらはどうか。4日に閉幕した愛知・名古屋アジア大会である。選手村を造らず、宿泊はクルーズ船やコンテナハウスに分散した。選手たちにはその施設が大不評。設備は貧弱で、肝心の輸送バスはトラブル続き。それだけではない。ホッケーの韓国戦の前に北朝鮮の国歌が流れ、サッカー男子の表彰式では、金メダルの韓国の国旗が揚がらないなどの大失態を演じた。韓国紙は「史上最悪のアジア大会」と報じたほどだ▼おまけに節約を掲げながら、経費はアジアパラ大会と合わせ当初想定の3倍超というから、見通しの甘さは否めない。組織委会長の大村秀章・愛知県知事は「いつまでも人々の記憶に残るすばらしい大会」と胸を張ったが、「国辱もの」の大会として、記憶に残ることだけは間違いあるまい▼そもそも、失敗すること自体が恥なのではない。失敗を省みず、成功を誇って済ませることこそ恥ずかしい。ぬいぐるみと旅するのは個人の自由だが、公の責任を負う者まで世間の批判に無頓着では困る。「こんな日本に誰がした」。思わずそうぼやきたくなる、国際大会ではあった。(熊)


