検察庁
2026年10月07日
米テネシー州で先月末、女性死刑囚への刑の執行が「失敗」に終わった。致死量の薬剤を2度注射したが死に至らず、病院に救急搬送されたという。注射後に生き延びた例は初めてとされ、州知事は年内の執行を取りやめた▼日本にも、似た記録が残る。現在の愛媛県内で1871年、祠の破却に反対する一揆が起こり、混乱に乗じて放火したとして、翌年、男が絞首刑に処された。ところが親族に引き取られて運ばれる棺の中で、男は蘇生した。扱いに窮した県の照会に、明治政府は、刑の執行は済んでおり改めて論じるまでもないとして、戸籍を復活するよう命じた。何とも割り切った判断だが、例外中の例外である▼死刑という刑罰はひとたび執行されれば、取り返しがつかない。北関東の連続幼女誘拐殺人を取り上げたNHK「未解決事件」が反響を呼んでいる。番組は、福岡県で1992年に女児2人が殺害された飯塚事件にも深く踏み込んだ。犯人とされた男性は無実を訴え続ける中、2008年に刑が執行された。DNA型鑑定が有罪の重要な根拠とされたが、番組は鑑定結果を示すネガフィルムが不自然に切り取られていた事実まで突きつけた▼死刑を求刑した検察は、気が気でないだろう。袴田巌さんの無罪以降も、再審での逆転劇が続く。その一方で、検察の不祥事はやまない。取り調べで「検察なめんなよ」とすごんだ元特捜検事、部下への性的暴行の罪に問われた元検事正…。信頼の土台は揺らぐばかりだ▼韓国では、1948年の建国以来、強大な権限を持ってきた検察庁が廃止された。背景には、政権党の思惑があるとも指摘されるが、これだけの大改革が実現したのは、国民の検察不信がくすぶり続けていたからだろう。信なくば立たず。日本の検察庁にとって、人ごとではあるまい。(熊)


