市民感覚
2026年07月08日
大分から、新しい法律が生まれた。危険運転致死傷罪に速度の「数値基準」を設ける改正自動車運転処罰法が、先月末に成立した。背景には、大分市の一般道で2021年、時速194㌔の車が死亡事故を起こした事件があった。弟を失った長文恵さんら遺族の訴えが、あいまいだった法の壁を動かした▼194㌔。もはや移動ではなく、凶器の速度である。大分地裁は危険運転致死を認めたが、福岡高裁は「進行制御が困難な高速度」とまでは認めず、過失運転致死を適用した。長さんはかつて、裁判員裁判の一審判決が尊重されなかったことに触れ、「市民感覚と司法がかけ離れている」と悔しさをにじませた。法改正は長さんらの声に立法府が応え、その隔たりを少しでも埋めようとした試みであろう▼ところが、その成立からほどなく、同じ大分を舞台に別の速度違反が明らかになった。れいわ新選組の山本太郎代表が昨年10月、大分市内の東九州自動車道をレンタカーで走行中、制限速度80㌔のところを時速149㌔で走行し、摘発されていたという一件である。改正法の新たな物差しに照らせば、危険運転とされ得る速度域に重なる。しかも当時は現職の参院議員だった▼刑事・行政の処分は春までに出そろっていた。にもかかわらず党の公表は、違反から9カ月近くもたった7月3日である。しかも党ホームページでの発表にとどまった。弱い立場の声を政治に届けると掲げてきた政党である。ならば、自らに不都合な事実ほど、早く、まっすぐ説明するべきではなかったか▼れいわといえば、かつての勢いはなく、地方選の連敗が続き、党勢の陰りも伝えられる。窮すれば通ず、とはいかなかったようだ。「市民感覚とかけ離れている」という嘆きが向けられる先は、司法に限ったことではあるまい。(熊)


