大分建設新聞

四方山

放射線

2026年07月08日
 うーん。医療技術の進んだ現代にあってこういう考え方や体験があるのか…「目から鱗」の感もあった。その体験の持ち主が敬愛する偉大な小説家とあってはなおさらだ▼「青春の門」「大河の一滴」などの著書で知られる五木寛之さんは昭和7年生まれの御年93歳。三島由紀夫、石原慎太郎らお歴々と肩を並べて歩んできた昭和の大作家である。90歳を過ぎてなお盛んな元気老人だ▼その五木さんが雑誌のコラムに自ら90歳代でのがん体験を「私の非科学的推察」としてサラリと書いていた。コラムによると見つかったがんはステージⅡの中咽頭がん。医師との治療方針の相談で、選択肢として①手術②抗がん剤③放射線の三つを示され、迷わず「放射線治療1本で行きたい」と訴えた。テコでも動かぬ頑固な訴えに医師が「サジを投げて」認めた▼そしてごく小数回の放射線治療の結果、劇的に効いてガンが治癒した―というのである。なぜ放射線治療にこだわったのか。五木さんは「感情的に放射線1本の治療を主張したわけではない。私なりの養生の理論があったのだ」と書いている。幼いころから80代後半までほとんど病院の世話にならなかった。特に心掛けたのが放射線を体に受ける機会、つまりレントゲン撮影をずっと拒否してきたのだ。その体験から「自分の体が放射線に対する未開地だと考え、(がん治療に)放射線が劇的に効くのではないかと推理した」▼なるほど…。そういえば以前、「検査で放射線を浴び過ぎるのは体に良くない」と医療関係者が漏らしていたことがある。結果的に正解だった五木さんの「非科学的推察」による選択は的を射ている気もする。ただ、今どき放射線による検査を受けたことのない人などまずいない。この世のものとは思えない希少な体験談である。(マサ)
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