大分建設新聞

四方山

あきらめない

2026年05月27日
 焼け跡に戻すべきものは、建物だけではないようだ。昨年11月の大規模火災から半年が過ぎた大分市佐賀関で、人と人をつなぎ直す取り組みが続いている。公民館にのれんを掲げるカフェ「SEKI BACKS」。避難所で一杯のコーヒーをふるまったことから始まったという。店名には「1人でも多く佐賀関に帰ってきてほしい」との願いが込められている▼月1回発行される「佐賀関かわら版」もある。地域のニュースや行事予定を載せ、地元を離れた被災者にも届けているという。さらにネットラジオも始まった。住む場所が変わっても、ふるさとの声が届く。復興とは、がれきを片付け、家を建て直すことだけではない。もう1度、声を掛け合える関係を編み直すことでもある。そこに通底するのは、静かな「あきらめない」の精神だろう▼「あきらめない」と言えば、こちらも確かにそうなのだろう。大阪維新の会が看板政策「大阪都構想」の3度目の住民投票へ動き出した。過去2度、大阪市民に否決された構想である。来春の統一地方選と同日の実施を目指すという。維新にすれば「3度目の正直」を狙う勝負なのだろう▼「人はみな望む答えだけを/聞けるまで尋ね続けてしまう」。中島みゆきさんの隠れた名曲「永遠の嘘をついてくれ」の一節が、ふと頭をよぎる。否決を2度突きつけられてなお、「3度目の正直」を信じて、住民に問い直す。それもまた人間の業というものか▼政治において同じ問いを繰り返すことは、民意への執念にも見える一方で、民意を受け入れぬ未練にも見える。「仏の顔も三度まで」という言葉もある。望む答えは果たして返ってくるのか。それにしても、佐賀関に通う「あきらめない」の重みと、大阪維新の会のそれと。同じ言葉であっても響き方は全く別物だ。(熊)
名鑑CDバナー
取材依頼はこちら
事業承継プラザ 切り替え
arrow_drop_up
TOP