粛清
2026年04月15日
独裁者スターリンの名を聞けば、まず思い浮かぶのは、政敵を次々と葬り去った「粛清」である。時には、人知れぬ闇ではなく、法廷というもっともらしい舞台装置の上で行われた。1930年代のモスクワ裁判。スターリンのライバルたちが次々と被告席に立たされた。公開裁判の体裁をとり、被告の前にマイクは置かれていたが、台本にない弁明が許されることはなかった▼社民党の党首選後の記者会見が話題になっている。決選投票で福島瑞穂氏が大椿裕子氏を小差で振り切り、通算9回目の党首に就任した。だが会見で発言が許されたのは福島氏ただ一人。敗れた大椿氏らの目の前にもマイクは置かれていたが、記者が大椿氏にもコメントを求めると、司会者が「新党首の会見なので」と遮った▼大椿氏は「もう少し平等に扱ったらどうですか」と訴えたが聞き入れられず、途中で退席した。記者席からも「みっともない」と声が飛んだ。福島氏はといえば「みんなで頑張っていきます」と述べた直後、ゴンとマイクを置き、仏頂面を見せた。自民党の総裁選でさえ敗者の弁はある。反権力を掲げてきた当の党首本人が、党内では独裁者なのであろう▼社民党前身の日本社会党は野党第1党として政界に重きをなした。いまや所属国会議員は福島氏とラサール石井氏の参院議員2人だけ。衆院の議席はゼロである。マイクの前で発言を封じられた会見の光景は、この党が行き着いた先をあたかも象徴しているようだった▼社民党初代党首を務めた村山富市元首相が101歳で亡くなってから半年がたつ。戦後50年談話で、中国古典『春秋左伝』の一節「杖(よ)るは信に如(し)くは莫(な)し」を引いた。拠りどころとして信義に勝るものはない、という意である。使えないマイクを平然と置く現執行部に届くはずもあるまい。(熊)

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