大分建設新聞

四方山

デジタル私刑

2026年02月18日
 「悪事千里を走る」とは言うが、今や走るのはデマだ。衆院選直後から、SNSなどでは、「不正選挙」という物騒な言葉が飛び交っている。根拠不明な「投票箱がすり替えられた」という話も広がっている。制度上、衆人環視の下で行われる開票作業に、組織的な不正が介在する余地はほとんどあるまい▼発端は、公示前の議席ゼロから比例代表で約381万票を獲得し、11議席をもぎ取った「チームみらい」の躍進。開票所で使われる集計装置の設定を細工して、「みらい」に票を上乗せしたという珍説もまことしやかにささやかれる。集計機のメーカー名から「ムサシ陰謀論」と呼ばれている▼もっともらしいが、どれもでたらめである。これまでも新党ブームは繰り返し起こり、今回も既成政党に飽き足らない層が票を投じたということにすぎない。分かりきったことなのに、自身の尺度で納得できぬ結果を「陰謀だ」と決めつける。昔からそういう人たちは一定数いたはずだが、悪貨が良貨を駆逐するように、SNSによって一気に拡散する時代になった▼その意味では、衆院選3区はひどい状況だった。岩屋毅前外相に対し、「落選が国民の声」といった中傷がSNS上にあふれた。言論の自由を隠れ蓑にした「デジタル私刑」の様相を呈し、たまりかねた岩屋氏は投開票日直前に「民主主義の健全な議論を損なうもの」とする異例の声明を出す事態に追い込まれた▼中世の魔女狩りは火あぶりで行われたが、現代のそれはスマホである。便利であるはずのツールが、誰かを追い詰めるための武器に化している現実は、民主主義の土台を静かに、だが確実に腐食させる。民主主義は制度で守られるのではない。信頼で支えられる。その土台を崩しているのが私たち自身だとすれば、事態はより深刻である。(熊)
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