高市早苗氏
2025年10月06日
秋風が通う宇佐で、10年に1度の「臨時奉幣祭」が6日、古式の作法で行われた。天皇陛下の勅使が御幣物を携え御祭文を奏上する儀式。勅祭社は全国で16社のみで、九州では宇佐と香椎だけだという。今回は御鎮座1300年の節目と重なり、奉祝神楽などの関連行事も繰り広げられ厳粛な雰囲気に包まれた▼宇佐神宮の本殿は左から一之御殿・八幡大神(応神天皇)、二之御殿・比売大神(宗像三女神)、三之御殿・神功皇后をお祀りする。三柱のうち二柱は女神。武運だけでなく、学びや芸、安産や教育、旅や航海の安全へと祈りの社として歴史を刻んできた。天照大神をはじめ女神たちの活躍が描かれた日本神話。宇佐の社は、日本の国の成り立ちの源流に女性たちがいたことを示しているようだ▼だが、女性運動の先駆者・平塚らいてうが「元始、女性は実に太陽であった」と書かねばならなかったように、日本の近現代史は男性優位の中で時を刻んだ。男女の平等度を示す最新の「ジェンダーギャップ指数」によると、日本は148カ国中118位。かなり立ち遅れている▼その日本で新しい歴史のページが開かれた。自民党総裁選で新総裁に選出された高市早苗氏。臨時国会での首相指名を経て正式就任と報じられている。女性首相の誕生となれば、日本の憲政史上初めてのこと。宇佐神宮創建1300年の年に、誠に意義深い▼英国のサッチャー元首相を敬愛してきた。「勝つためには、一度ならず戦わねばならない」というサッチャー氏の言葉の通り、激闘の末に勝ち取った総裁の座。保守的立場を強調する手法に、分断を招くとの懸念も指摘される。国民生活が疲弊している中、目指すべきは「鉄の女」よりも、しなやかに人を束ねる〝対話の女神〟だろう。違いを包み込む政治であってほしい。(熊)