大分建設新聞

四方山

民主主義

2025年09月24日
 二枚目俳優として名をはせたロバート・レッドフォードが亡くなった。1960~70年代、『明日に向かって撃て!』『スティング』で世界的スターとなり、社会問題に切り込む作品にも積極的に出演した。ハリウッドが生んだ「アメリカの良心」と呼ばれるゆえんである。スクリーンの華やかさの裏で、一貫して時代への警鐘を鳴らし続けた存在だった▼訃報にトランプ大統領も「偉大な俳優だった」と弔意を示したが、皮肉なことに、レッドフォードが生涯を通じて訴えてきたのは、民主主義への信頼と同時に、権力の暴走の恐ろしさだった。『大統領の陰謀』(76年)ではウォーターゲート事件の真相に迫り、自ら監督、主演を務めた『大いなる陰謀』(2007年)ではアフガニスタン戦争を材に取り、野心が招く政治の歪みを描いた▼トランプ氏の暴走が止まらない。移民を規制しながら、富裕層向けに100万㌦(約1億5000万円)で永住権を売る「ゴールドカード」構想を打ち出す。一方で、身内には甘く、逆に気に入らない記事を書いたとしてニューヨーク・タイムズを相手に2兆円超の巨額賠償を求める訴訟まで起こした▼「米国一国主義」を掲げ関税政策で世界秩序を壊し、今ややりたい放題である。まるで独裁者の振る舞いだ。「自由主義の盟主」たるはずの国が、幻影のごとく揺らいでいる。民主主義の基盤である報道の自由は脅かされ、法の秩序さえねじ曲げてしまう。究極の「大統領の陰謀」のようにも見受けられる▼しかも厄介なのは、民主主義の名の下に、こうした事態が進行していることだ。レッドフォードが信じた民主主義の強靭さは霧散したのか。米国の背を追ってきた日本も傍観者ではいられない。何をどう守ればいいのか。その問いは私たちにも突きつけられている。(熊)
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