大分建設新聞

四方山

誤報

2025年09月19日
 「記事は誤報でした。おわびします」と、間違えられた国会議員に謝罪し、1面に訂正記事を出した。国内トップの発行部数を誇る新聞社として痛恨の誤報だったろう▼読売新聞が8月27日に1面トップで報じた国会議員による秘書給与詐欺疑惑の記事。東京地検特捜部の極秘の捜査情報をつかみ、特ダネとして国会議員を実名、顔写真付きで報道。しかし疑いの人物は別人だった▼過去の誤報の中でもこれほどひどいものは珍しい。テレビや他紙がこの誤報騒動を大きく報道し、事の重大さを伝えた。その後、同紙は1㌻を割いてその原因を検証する記事を掲載。「記者の思い込みが原因で、社内のチェック機能も働かなかった」と釈明し関係者を処分した▼昔、警察担当記者の端くれだったわが身も、「抜いた、抜かれた」の特ダネ競争に明け暮れた経験がある。事件を巡り警察の捜査状況を他社に先駆けていかに早く書くかが勝負だった。ライバル社に勝つことだけを考えて突っ走った▼当時はその事に何の疑問も感じなかった。だが今は少し違和感を抱いている。その取材合戦、特ダネ記事にどれほどの価値があったのか?という懸念である▼容疑者逮捕の予定など、捜査の情報を事前にすっぱ抜く記事は、確かに読者の目を引き、新聞社の評価を高めるかもしれない。だが、それが社会にどれだけ役に立つのか。記事が出なくても捜査が進めばいずれ明らかになること。実際は単なるマスコミ間の競争、自己満足の世界ではなかったのか▼今回の誤報に接してそんな思いを強くしている。ジャーナリズムの使命は、警察や行政が見落とし、隠された問題を掘り起して提起することだ。奇をてらったり速報を競うのはテレビやインターネットに任せて、新聞は社会の羅針盤としての王道を進んでほしい。(政)
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