大分建設新聞

四方山

信用

2025年09月10日
 美辞麗句を掲げながら、その言葉に自ら足をすくわれる―そんな光景を私たちは幾度となく目にしてきた。たとえば日産自動車のカルロス・ゴーン元会長。コンプライアンス経営を唱え、世界に向けて「透明性」を強調していたが、有価証券報告書に自身の報酬を過少に記載したとして失脚したのは記憶に新しい。このスター経営者もその系譜に連なるのだろうか▼経済同友会代表幹事として、経済問題だけでなく、夫婦別姓問題など社会的な話題にも積極的に発言し、精悍なマスクも相まって「財界のご意見番」としての地位を築いてきた。その新浪氏はいま、違法性が疑われるサプリの輸入問題で渦中に立つ。潔白を強調しつつも、サントリーホールディングスの会長職を追われた。何ともスキャンダラスな展開である▼歯に衣着せぬ物言いが持ち味だった。政府が「最低賃金一律1500円(時給)」を打ち出すと、「払えない経営者は失格」と断じ、中小企業経営者の度肝を抜いた。労働者にも容赦がない。「45歳定年制を敷いて会社に頼らない姿勢が大切だ」と論じ、サラリーマンを震え上がらせた▼強気の持論である。さぞかし己自身に対しても厳しく律するのだろうと思いきや、さにあらず。同友会の代表幹事という役職については「進退は同友会に委ねる」と歯切れが悪い。もしや地位に恋々なのか。ともあれ「組織に頼らない姿勢」を論じたこととの落差が際立つ▼捜査の途上である以上、「推定無罪」が原則である。だが、経営者にとって最大のブランドは「信用」である。それを思うと…なのである。「やってみなはれ」とは、サントリー創業者・鳥井信治郎氏の言葉を、二代目の佐治敬三氏が広めた経営哲学である。果たして、泉下の敬三翁、今の新浪氏に、その言葉を掛けるだろうか。(熊)
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