こねり
2025年08月21日
拙宅の裏庭に植えたナスとニガウリ(ゴーヤ)がこの夏も豊作だ。5月にそれぞれ3~4本の苗を買って植えた。水や肥料を忘れずに与え大事に育ててきた。ナスはやや実付きが少ないがニガウリは壁に這わせたネットに次々と実をつけている。油断していると実が黄色く熟れるので収穫にも気を遣う▼さて、この時期どっさり収穫したナスとニガウリをどう料理して食べるかである。ナスは焼きナス、味噌炒めにしたり、ニガウリはゴーヤチャンプルにしたりと女房が工夫しているが同じパターンはどうしても飽きてしまう…と思案して、ナスとニガウリを使った懐かしい料理があったのを思い出した▼大分県の郷土料理「こねり」をご存じだろうか。国東地方では「オランダ」と呼ばれている。ナスとニガウリを半月切りなどにして油で炒め、酒や砂糖で溶いた味噌を加えて味をつける。最後に水で溶いた小麦粉を絡めとろみをつければ出来上がり。イリコを入れたり、味噌でなく醤油で味付けしたりと地域や家庭によって違いはあるが、あのねっとりした食感は独特だ▼年配の大分県人には懐かしい方も多いだろう。私にとっても幼い日のおふくろの味である。昭和30~40年代のわが家の夏の食卓にはこねりが嫌というほど出てきた。あのころはニガウリの苦味が嫌で嫌いな料理だったが、年をとると穏やかに変わってくるのが味覚、味の好みである▼大分市内の郷土料理店ではだんご汁、やせうまと並んである常連の一品だ。この夏、初めて自分で作ってみて「こりゃあ旨い」「ビールにも最高に合う」と自画自賛して毎日のように食べている▼時間がゆっくりと流れていた昭和のあのころ。貧しかったが心豊かで希望にあふれていた。こねりは早く逝った母を思い出す忘れられない懐かしい味である。(政)