凡事徹底
2025年07月31日
公務員の規範の緩みが目に付く。大分市を舞台に起きた、入札をめぐる一連の不祥事だけでない。県は公用車2台を車検切れのまま20日以上も運用していた。基準値の15倍以上のダイオキシンを排出させていたことが発覚した姫島村では、必要な検査が1年間見過ごされていたことが明るみに出た▼つい最近も、サケが故郷の川を目指すように、舞台は大分市に戻り、酒に酔った市幹部職員が部下に暴言を吐いていたパワハラ問題が報じられた。ありていに言えば、目くじらを立てるような不祥事の類いではない。だが、場合によっては大きな事案に発展しかねない失態だった。同時に、いずれもほんの少しの配慮があれば防げた〝凡ミス〟である▼弊紙7月9日付紙面に出ていた日伸建設の安全大会の模様を報じる記事。大庭浩司社長のコメントから大切な言葉を学んだ。「凡事徹底」である。四字熟語のようだが、掲載されている辞書は限られている。要は近年使われ始めた造語である。カー用品チェーン「イエローハット」を一代で築いた鍵山秀三郎氏が1990年代に提唱した言葉とされる▼鍵山氏と言えば、「トイレの神様」「掃除の神様」の異名が付くほど、率先して人が嫌がる掃除に汗を流した。それも何十年も、である。「社員にしてあげられる感謝の気持ち」の一心だったという。次第に組織としての強さにつながり、売り上げは向上。実践から生まれた言葉が「凡事徹底」だった▼鍵山氏は言う。「平凡なことを徹底すれば、非凡な成果が現れる」。日々の業務は、平凡な作業の連続かもしれない。けれど、その凡事を侮らず、どこまで丁寧に積み重ねられるか。今の時代にも十分通じる話かと思う。派手なところばかりに目が奪われがちだが、地道な姿勢こそが報われる時代になってほしい。(熊)