大分建設新聞

四方山

国土強靱化

2025年07月02日
 「梅雨明けや 森をこぼるる尾長鳥」。俳人、石田波郷の夏到来を映す一句だ。雨季を置き去りにしたかのように、本県を含む九州北部が6月27日、梅雨明けした。観測史上初めて6月の梅雨明け宣言という。早くもあの酷暑の季節到来かと思えば、「梅雨明けや」などと、風雅な気持ちは失せる▼こうも異常な気象が続くと、思わぬ天災も…と、つい気に病んでしまう。刻一刻近づいているとされる南海トラフ地震である。6月13日付弊紙の1面の記事はショッキングだった。土木学会の算出によると、被害額は政府想定の5倍強に当たる1466兆円に上るという。同時に、強靱化対策に58兆円以上を投じれば、3割程度減災できるとの推計も示した▼思えば、東日本大震災の被害総額は、発生直後の内閣府の算出で最大25兆円とされた。一概に比較できないとは言え、南海トラフの地震の被害想定の大きさに驚かされる。その南海トラフ地震について、政府は今年1月、30年以内に起きる確率について「80%」に引き上げた。差し迫った危機である▼ところが、東京新聞5月27日付紙面がこんな見出しのニュースを報じていることを最近知った。「計算モデル『間違いの可能性』」。「30年以内に80%」とする政府発表発生確率について、算出の計算モデルを発案した島崎邦彦・東大名誉教授自身が誤っている可能性を言及したという。場合によっては低くなる可能性もあるらしい▼同時に「あと5年程度で南海トラフ地震が起きなければ、このモデルは間違っていたことになる」とも語ったという。何を信じたらいいのか…と思ってしまうが、将来的に南海トラフ地震が起きることは揺るがない。未来の「保険」として、3割減災に向けて国土強靱化の取り組みを前に進めることに、力を緩めてはならない。(熊)
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