大分建設新聞

四方山

暴言

2025年05月15日
 「鉄の暴風」と呼ばれた沖縄戦が終結したのは1945年6月23日。今年で80年を迎える。「秋待たで/枯れ行く島の/青草かな/皇国の春に/甦らむとす」。沖縄守備を任された軍司令官の牛島満陸軍中将が自決する直前に詠んだとされる辞世の句である▼死を覚悟した軍司令官の眼に映った、焦土と化した沖縄の絶望的な風景と、それでも戦後日本の未来を信じたいとする思いがせめぎ合うように交錯している。陸上自衛隊第15旅団(那覇市)がホームページに、この辞世をアップしていたことが報じられ、「戦争を美化しているのではないか」などいう批判の声が上がったという▼だが、この句から戦争賛美の思いは読み取れない。浮き上がるのは、青々とした島を枯れ野に変えた戦争の無残である。「枯れ行く島」の一語の背景には、おびただしい死者たちがいる。むしろ問題なのは、同旅団が「皇国の春」の字句を「御国の春」に改変していたことだ。「皇国」の字句に配慮したのだろうが、その行為自体が不信を招くことに思いが至らなかったのであろうか▼だが、この件に比べればまだ救いがある。自民党の西田昌司参議院議員による「ひめゆりの塔」の展示内容をめぐる一連の発言である。「(説明が)アメリカによって沖縄が解放された文脈で書かれている」とし、「歴史の書き換え」と痛烈に批判したが、実際にはその種の説明文はなかった。改変どころでない。捏造である▼沖縄戦では激しい地上戦が繰り広げられ、県民の5人に1人が犠牲になった。「米軍による解放」などと考える沖縄県民がいるだろうか。結局、西田氏は発言の撤回に追い込まれた。事実を書き換える言葉は、死者たちへの冒涜である。国民を代表する国会議員の暴言。「青草」の下に倒れた無数の死者は浮かばれまい。(熊)
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