大分建設新聞

四方山

観光立国

2025年05月09日
 知人から聞いた話だ。所用で東京に行くことになった。定宿にしているそこそこ有名なホテルを指定したところ、料金を聞いて耳を疑ったという。何と1泊で18万円と言われたという。つい数年前は6万円の部屋だった。物価高騰の昨今とはいえ、わずか数年たらずで3倍に跳ね上がったことに驚いたという▼「ちょっと贅沢とは思いつつも、気心が知れているホテルの方がリラックスできると思っていたのですが…。もう無理ですね。別のシティホテルを選びました」と苦笑した。「部屋が改装されたり、何か新しい付加価値がついていたりすれば納得もできるのですが、それこそ部屋の設備は数年前と全く変わっていないという話。それで3倍とは―と呆れてしまった」▼朝日新聞4月18日付記事によると、東京や横浜のビジネスホテル約260施設で組織された「東京ホテル会」の集計では、平均客室単価は昨年11月に初めて2万円を超えた。5年前に比べると1・7倍という。当然ながら出張族の財布を直撃している。会社規定の出張旅費ではまかなえず、不足分は自腹という嘆き節も聞こえてくる▼安さを売りにしてきたビジネスホテルでも、このありさまだ。背景にあるのは、インバウンド需要の拡大である。円安を背景に急増傾向が続く。2024年は約3686万人。5年前に比べて15・6%増である。今年もすでに過去最速で1000万人を突破した▼「貿易立国」とうたわれたのは今は昔。「観光立国」の名の下に外国人の落とす金で稼ぐしかない国になってしまったのか。それがための「過剰な料金」の設定だとしたら、あまりにさもしい。星野リゾート代表の星野佳路氏は「価格上昇を放置すれば、顧客満足度が下がり需要も急減する」と警鐘を鳴らす。その前に、同胞から見放されそう。(熊)
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