窃盗と詐欺
2025年05月02日
なぜ、こんなものまで盗まれるのかと、思わず頭をひねりたくなるような窃盗事件が起きているという。大分合同新聞4月11日付紙面によると、道路脇の側溝や、公園内のトイレに設置された金属製のふた「グレーチング」が盗まれる事件が頻発しているらしい。同紙の取材では今年に入って3月末までの間に、少なくとも26件の被害が確認されたとしている▼何も本県に限った話ではない。埼玉県熊谷市では昨年、私鉄車両基地から重さ270㌔の鉄製車輪76個が何者かによって盗まれた。総重量1㌧を優に超える量である。その他、千葉県内では道路の鉄製ガードレールを持ち去るという荒っぽい事件まで起きている▼警察庁の集計によると、金属盗難の認知件数は昨年1年間だけで2万701件で、統計を取り始めた2000年に比べると、約4倍に激増している。背景にあるのは金属価格の急騰だ。鉄スクラップの買い取り価格は、10年前に比べて1・5倍の1㌧当たり5万円近くという。建設作業現場でもおびただしい量の金属製品が使われている。工事の安全だけでなく、盗難被害にも注意を要する時代になったよう▼グレーチングの被害金額は1枚当たり2万円前後という。だが、前述の通りスクラップにしてしまえば、その価値は微々たるものだ。それこそ数時間でも労働という汗を流せば手にできる金額である。にもかかわらず公衆施設から公共財を盗む。公共心もここまで地に落ちたかと嘆息せざるを得ない▼そんな折も折、預金口座を他人に売り渡し詐欺罪に問われた大分東署生活安全課の巡査が懲戒免職になった。その口座は特殊詐欺事件で使われた。取り締まる側が事件に関与していたわけで、その罪は大きい。上に立つ者正しければ下も正し、ともいう。県警には猛省をお願いしたい。(熊)