大分建設新聞

四方山

新たな教祖はネット

2025年03月25日
 若い学生たちと話す機会があった。たまたまオウム真理教事件の話になった。都心を走る地下鉄内で猛毒の神経ガス、サリンがまかれ死者14人、6000人以上の負傷者を出した未曽有の無差別テロ事件である。ほとんどの学生が知っていたが、事件を起こしたオウム真理教については分かっていないようだった。無理もない。今から30年前の話である▼地下鉄サリン事件だけでなく、長野県松本市でもサリンを散布するなど数々の凶悪事件を引き起こしていた。事件は、教組と呼ばれた麻原彰晃(本名・松本智津夫)の「日本の統治者になる」という妄想から始まった。最初のころは、選挙戦を通して合法的に権力を握ろうとしたが惨敗した▼その時、麻原が振りかざしたのが「陰謀論」だった。「自分を恐れて、政府が投票箱をすり替えた」。教団は武装化に舵を切っていく。日本政府との戦争を本気で考えた。あまりにも荒唐無稽である。だが、逮捕された実行犯の中には、一流と呼ばれる大学で教育を受けた若者たちも数多かった。疑うこともなく、教組が語る奇抜な陰謀論に心をからめとられていた▼事件後、「狂信的な集団」という意味でオウム真理教は「カルト教団」と呼ばれるようになった。事件から30年。私たちの社会は、そうしたカルトとは無縁になったのだろうか。いや、ますます深刻化しているように見受けられる。新たな教組は人間ではない。ネットである▼例えば、兵庫県政の混乱。ネットで飛び交う根拠のない中傷に耐えきれず、県議が辞職に追い込まれ自死する事態まで起きている。兵庫県に限った問題であろうか。一昔前なら「デマ」とうち捨てられたであろう情報がネット上では、真実のように語られる。はき違えられた「言論の自由」。放置されたままでいいはずがない。(熊)
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