大分建設新聞

四方山

韻を踏む

2025年03月12日
 歴史は繰り返さないが韻を踏む、ともいわれる。それにしてもなぜ、同じ場所でこうも深刻な災害に見舞われるのだろうか。岩手県大船渡市で起きた大規模山林火災。市域の1割近くを焼き尽くす勢いだった。東日本大震災では大津波に見舞われ、壊滅的な打撃を受けた。住民の心痛を思うと掛けるべき言葉が見つからない▼東日本大震災から14年。テレビで時々刻々報じられた被災地の惨状は今も生々しく覚えている。それ以上に、遠く離れた九州にいて恐怖したのは、東京電力福島第1原発の事故だった。爆発し白煙を上げる原発施設。当初からメルトダウン(炉心溶融)が疑われ、外国メディアはいち早く報じたが、東電はそれを強く否定した▼結局、東電がメルトダウンを認めたのは事故から2カ月以上経過してからだった。事故の規模は、史上最悪とされる旧ソ連のチェルノブイリ事故と同レベルの深刻度だった。厳しい言い方になるが、東電による国民への背信と断じても過言ではあるまい▼しかも、「想定外」とされた津波についても、東電は、事故の3年前に巨大津波襲来の可能性を把握していたにもかかわらず、具体的な津波対策を講じてこなかった。東電旧経営陣の刑事責任が問われた裁判でも、まさにそのことが争点になっていたが、最高裁が一審、二審の無罪判決を支持したことで、無罪判決が確定した▼つまり、巨大津波は予見不可能と、司法は認定したのだ。だが、それこそ「万全な対策」を前提に「原発は安全」とPRしてきた同社の道義的責任はどうなるのだろうか。国は原発稼働に舵を切った。エネルギー小国であるがゆえに苦渋の判断であることは分かる。にしても、未曽有の事故への反省がなければ、韻など踏まず同じ悲劇が繰り返されるのでは…。そう危惧するのだ。(熊)
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