大分建設新聞

四方山

貧富の差

2025年03月07日
 1976年にスタートした長寿漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。ごく初期の回に、主人公、両津勘吉が駄菓子屋で、瓶入りのコーヒー牛乳を片手にあんぱんをほおばる場面がある。「朝食かい!」と感心する女主人に、両津はうまそうに瓶を傾けて「ゴクゴク」。女性の片手には「ふた開け」。作者、秋本治さんの観察眼が光る▼でも、令和の子には伝わらないかもしれない。何しろ瓶入りの牛乳は激減しているからだ。明治乳業は今年度いっぱいで瓶入り牛乳の販売を終了すると発表した。すでに森永乳業などは販売を止めており、紙パックに移行している。大手で生産継続を表明しているのは雪印メグミルクぐらい。今や瓶入り牛乳は絶滅危惧種である▼古代の大和王権はこの国土を「大日本豊秋津洲」と呼んだ。「大日本」は「やまと」と読み、現在の奈良地方。「豊秋津洲(とよあきつしま)」は、「秋の訪れとともに実り豊かになる島」という意味が込められている。実りとはもちろん、米のことである。現在も日本の美称として使われているが、返上しなくてはならないような事態である▼天井知らずの米価の高騰である。主要品種のコシヒカリで見ると、この1年で1・8倍にまで跳ね上がった。「実り豊か」どころか、日本人にとって主食である米が信じられないほどの値段になっている。米だけでない。食品値上げは昨年同期の1・8倍に当たる約1万1000品目に達する▼前日銀総裁の黒田東彦氏は先月、都内で開かれた講演会で「日本経済は完全復活」「賃金と物価の好循環が回復した」と豪語したという。最近まで日本経済の舵取りを任されていた前総裁は、一体、どこを見て「好循環」と言っているのだろうか。生涯賃金10億超とあっては、国民生活など眼中外なのかもしれぬ。(熊)
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