楽しい日本
2025年01月17日
つい先ごろまで「美しい国」という標語が飛び交っていたというのに、今度は「楽しい日本」らしい。石破茂首相は年頭記者会見で述べた新しい国のかたち。「強い日本は国会が主導し、豊かな日本は企業が主導した。これからは一人一人が実現する楽しい日本を目指すべきだ」▼安倍晋三元首相が掲げた「美しい国」もピンとこなかったが、「楽しい日本」といわれても戸惑う。物価高に円安のダブルパンチに見舞われ一般的な国民生活は苦しくなっている。日本人のプライドのよりどころだった「経済大国」と評される時代は終わったというのに、どこに「楽しさ」があるというのか▼「あなたのまわりにいまだ残されているすべての〝美しい〟もののことを考え、〝楽しい〟気持ちでいましょう」。ナチスの強制収容所で命を絶たれたユダヤ人少女、アンネ・フランクの日記の一文である。絶望の中で、かすかな光明に希望を託したいというけなげな願い。昨今の日本の標語に重なる。「美しい」から「楽しい」への転換は、厳しい日本の現状を把握した上での石破氏なりの思いがあるのかも知れぬ▼石破氏が「楽しい日本」に向けての重点政策に掲げるのが「地方創成2・0」。「若者や女性に選ばれる楽しい地方づくり」が主眼という。これまた抽象的で分かりづらい。そもそも地方創成が唱えられてから10年になるが、成功した具体例は聞かない▼米配信テレビドラマ「SHOGUN」が米ゴールデングローブ賞で4冠に輝いた。制作、主演と大活躍した俳優、真田広之さんの受賞の言葉は印象的だった。「自分らしくあり続けろ。自分を信じ、諦めるな」。それを聞いてこんなことを思った。今、私たちに必要なのは、抽象的な夢のバラマキではなく、リーダーとしての力強いメッセージではないかと。(熊)