大分建設新聞

四方山

国民の信頼

2024年12月17日
 漢字一文字で世相を切り取って見せる「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会主宰)。2024年は「金」に決まった。思えば、パリ五輪での日本選手の金メダル獲得や、米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の値千金の活躍に目を見張った年であった▼だが、それだけではない。光あるところ影がある―のたとえ通り、金目当ての闇バイト強盗事件といった信じられない凶悪事件も頻発した。そして、国民に深刻な政治不信を巻き起こした自民党の「裏金」事件もあった。思えばその問題の処理をめぐって、岸田文雄政権は退陣を余儀なくされ、石破茂氏が首相の座をつかんだ▼「今年の漢字」と時期を合わせて、首相も一文字を披露するのが恒例になっている。石破氏が挙げたのは「謙」だった。その心は「謙虚に己をむなしくして、いろいろな方の意見を素直に承っている」と述べた。「103万円の壁」では野党に譲歩を強いられるなど、少数与党の悲哀をなめている実感のようにも感じられる▼石破氏は国会の所信表明演説で「率直に意見をかわす慣行を作り、相互に協力を惜しまず」と語った。1957年に発足した石橋湛山内閣の施政方針演説の引用だった。病のため在位期間は65日と短命内閣だったが、湛山の政治思想は超党派の議員勉強会が発足するなど今、注目の的だ。石破氏も名を連ね、謙虚もまた、湛山の信念であった。影響を受けているのであろう▼湛山は政治家には珍しく思想家でもあった。イデオロギーを排し、自由主義と個人の自立を唱えた。湛山は言う。「政治家の私利心が第一に追求すべきものは、財産や私生活の楽しみではない。国民の間からわき上がる信頼であり、名声である」。内閣支持率は30%台と超低空の石破氏。皮肉にも肝心の国民からの信頼がないのが寂しい。(熊)
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