大分建設新聞

四方山

紙の記念日

2024年12月13日
 今年の10月、国民スポーツ大会で佐賀県を訪れた愛子さまが、大会競技を見た後、佐賀市北部の山中にある手すき和紙の工房で「すのこ」を使って紙すきを体験されていた姿が印象に残った。この地区では「名尾和紙」と呼ばれ、300年続く伝統の手すき和紙だという▼和紙の原料には「楮」「ミツマタ」「雁皮」などがあり、樹皮の繊維質を原料にする。楮は、クワ科の落葉低木で高さは3㍍ほどになる。私の実家でも周辺に多く自生しており、深いこげ茶色をした樹皮がきれいに剝がせるのが特徴。昔は、決まった寸法に切って束ねたものを、近所で荷受けを取りまとめる人に出荷していたらしい。その頃はまだ、和紙の需要があったのだろう▼いま、よく使われている紙ストローは、何となくアイスコーヒーやシェイクを飲む味に抵抗がある。いや、舌触りがよくないのか。牛乳も紙パックより瓶入りの方が、牛乳本来のコクを味わえる気がする。スターバックスコーヒージャパン(東京都品川区)は、来年1月からストローの素材を「紙」から植物由来のバイオマスプラスチックに切り替えるとした。2020年に紙製に移行して以来5年ぶりだ▼1875(明治8)年12月16日、東京・王子の「抄紙会社」の工場が営業運転を開始した。この会社は、新一万円札の肖像でおなじみ渋沢栄一が大蔵省紙幣寮から民間企業へ独立させた会社で、当時、輸入に頼っていた洋紙の国産化を企画した。現在、王子製紙の前身である。その後に王子製紙は、国内市場の8割以上を握る巨大製紙会社に成長した▼近年、DX化で紙が使われない時代が進んでいる。私たちが愛する新聞業界も紙の発行が減少傾向といえよう▼16日は「紙の記念日」。私は毎日、時代に反して紙面とにらめっこ。「紙よ、よみがえれ!」。(勇)
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