最後の晩餐
2024年12月09日
「最後の晩餐」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。レオナルド・ダビンチの有名な絵画か、キリストが最後に食べたパンとぶどう酒か。ちなみに私は「ダイエットを決意した日の夜に食べた、Lサイズのピザ」を思い出した▼一般的に最後の晩餐とは、キリストが処刑される前夜、十二使徒と共にとった夕食、または、その夕食の席で起こったことを指す。しかし現代では意味が異なり「死ぬ前の最後の食事」として語られる場合がある▼死刑囚が死刑執行前に、フルーツやアルコールなどの嗜好品を楽しむ時間も、同様の名で呼ばれる。日本では執行時間の関係から午前中にその時間が設けられるわけだが、死ぬ前の最後の食事だから、夕刻ではないが「最後の晩餐」とするわけだ▼死ぬ前に何が食べたいか―誰でも一度は考えたことがあるだろう。許されるならたくさん選びたいし、ぜいたく品も候補に入れたい。子どもの頃に夢見た「ショーケースの端から端まで全部」などもいい▼そんな取り留めもないことを考えていたとき、驚くニュースが飛び込んできた。秋田県のスーパーの店内にクマが現れ、従業員を襲い、2日間も店内に居座っているという。被害者がいる以上、殺処分は間違いない。クマは店内を自由に歩き回り、肉、野菜、魚、果物を好きなだけ物色したに違いない。調べるとベーカリーコーナーもあるようなので、パンもつまんだかもしれない。まさに「最後の晩餐」だ▼最終的に、クマは電気で殺処分された。抗議の電話が殺到したとの報道もあったが、本当にかわいそうなのは、けがを負った従業員と、休業を余儀なくされたスーパーの運営であろう。地域の安全安心を守るという意味では、致し方ない結末だったように思う。せめてクマが「最後の晩餐」を楽しめたことを願いたい。(万)