居場所
2024年12月05日
「マー君」の愛称で親しまれる田中将大投手が楽天からの電撃退団を表明した。2006年、同球団に入団。実力もさることながら、強運ぶりに当時の野村克也監督が「マー君、神の子、不思議な子」と評した言葉は今も語り草だ。13年の球団初のリーグ優勝、日本一に貢献。その後、大リーグ・ヤンキース入りし、21年に楽天に復帰していた▼ここ数年、負傷に苦しみ、今季の登板は1試合だけで初の0勝に沈んだ。とはいえ、球団への貢献度を考えれば「ミスター楽天」の称号は不変のはず…。だが、勝負の世界は厳しい。球団との交渉を経て下した決断が自由契約だった。「居場所がないんじゃないかと受け取った」「期待されていない」などと、自身のネット番組で語った。何とも寂しい▼「居場所」といえば、南米で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席し、本格的な外交デビューとなった石破茂首相からも、何やら居心地の悪さのようなものが伝わってきた。APECでは、肝心の集合写真の撮影時間に遅れてしまった▼ただの集合写真ではない。どの位置に立つのかは、国際社会に占めるその国の存在感を示す上でたいへん重要なこととされる。にもかかわらず、最初から映っていないというのは異例のことだ。その心理的動揺があったのかもしれない。間に合ったG20の集合写真を見ると、最後列のほぼ端っこである▼二つの国際会議とも、前列の中央は、中国の習近平国家主席がデンと構える。韓国の尹錫悦大統領も真ん中付近キープ。目立たない石破首相の立ち位置は寂しい。支持率30%台に低迷する石破内閣。取って代わろうとする好敵手が名乗りを上げてもおかしくはないが、そうならないところはマー君同様、「不思議な子」?(熊)