大分建設新聞

四方山

修正

2024年10月16日
 スターリン統治下の1930年代のソ連(現ロシア)では、「大粛清」と呼ばれる嵐が吹き荒れた。反発する政敵を徹底的に弾圧した。次第に一般市民に及び、数百万人の命が奪われたとも言われている。同時に、スターリンが熱心に進めたのが写真の修正だった。共産党の公式写真に政敵が写っていれば、その部分を消し去るか、別の人物に差し替えた▼ここまでくれば、修正の域を超えた歴史の偽造である。それに比べれば、こちらは児戯みたいなものであろう。石破茂内閣発足に当たっての集合写真を、政府が加工して発表していた件である。当初、石破首相と中谷元・防衛相のモーニングの腹部から白いシャツが見えていたが、きれいに消されていた▼シャツはベストで隠すのがモーニング着用のマナーらしい。発足直後に、各メディアが手を加えない写真を配信していたから、政府による加工はバレバレ。それでも修正に踏み切ったのは、ネット上で広がった「だらし内閣」などと皮肉る声を意識したのかもしれない。結局、政府は「軽微な編集処理」と釈明に追われた▼それにしても、お二人とも恰幅がいい。「頭隠して…」と言うが、さながら「腹隠せず」といったところか。刷新の期待を背負って発足したばかりの石破政権だが、このところ守勢に立たせられる場面が目につく。安全保障問題など、総裁選での訴えた持論を封印し、「変節」などといった声も上がる▼隠せないのは腹だけでない。「裏金問題」議員には厳しい処断を下した石破氏だが、かつて自ら率いた派閥の政治資金パーティーを巡り、一部の収入が記載されていないことが発覚した。少額とはいえ、こちらも「修正」に追われた。痛くもない腹を探られる思いかもしれないが、腹を据えてこの難局に当たってもらいたいものだ。(熊)
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