大分建設新聞

四方山

正義とは

2024年10月03日
 恥知らずにもほどがある。NHKラジオ国際放送の中国語ニュース番組で、中国籍の男性スタッフが尖閣諸島について「中国の領土」と発言していた問題は、国会で取り上げられ、NHKの責任が厳しく問われる事態に発展した。結局、総務省による行政指導が入り、国際放送部門の担当理事が責任を取る形で辞職に追い込まれたはずだった▼ところがわずか1週間後、元担当理事は契約社員として現場に復帰を果たしていた。さすがに当のNHK内部からも「偽装辞任」の声が上がっているというが、問題を報じた毎日新聞によると、関係者は「辞任はもったいないと思っている」と開き直っているという▼ならば最初から辞任などさせなければいいのに、つまるところ問題の沈静化を図るための「偽装」工作だったのだろう。姑息だが、他者を苦しめていないだけにまだ救いはある。こちらの「偽装」は違う。静岡県内で一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、再審裁判で58年ぶりに無罪になった袴田巌さんのことだ▼静岡地裁は、袴田さんを犯人とする決定的な物証としてきた「犯行着衣」や供述調書などについて「ねつ造」と認定した。実際に存在するものに細工する「偽装」などではなく、ゼロから証拠をでっち上げたというのだ。しかも、警察、検察の捜査当局によってつくり上げられたとまで断定した▼裁判所がここまで捜査当局の無法を指弾した判決は、過去に例はあるまい。58年にわたって「死刑」の恐怖にさらされた袴田さんは、精神を病んでしまっている。すでに88歳。あまりに悲惨な人生である。検察には控訴権がある。タイムリミットは10日。面目を潰された検察も黙っているわけにはいかないかもしれない。だが、これ以上袴田さんを苦しめて、誰のための正義なのだろうか。(熊)
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