大分建設新聞

四方山

強欲

2024年09月27日
 60年を超えるNHK大河ドラマの歴史上、初めて平安時代の貴族政治全盛期を舞台に据えた「光る君へ」。華麗な王朝絵巻だけでなく、貴族社会の姿も丁寧に描かれている。実入りのいい国司―今でいう知事になろうと、藤原道長ら上級貴族に取り入ろうと働き掛ける場面もあった▼説話文学の「今昔物語」には、道長の時代に信濃国(長野県地方)の国司を務めた藤原陳忠の話が出てくる。任期を終えて都へ帰る途中、深い谷底に落ちてしまう。心配する家来が縄をおろすと、籠いっぱいのキノコが上がってくる。「無事なのか」とやきもきする家来をよそに、またもや地上に上がってくるのはキノコ▼最後に引き上げられた陳忠はこう言って笑ったという。「受領(国司)たる者は倒るるところに土をつかめ」。転んでもただでは起きない、というわけである。『今昔物語』は国司の強欲ぶりを皮肉っているのだが、プラスに見ればたくましき商魂と言えるかもしれない。あの大阪商人もそうなのだろう▼大阪一の繁華街ミナミ。ラーメン店に掲げられた竜の立体看板の尻尾が隣家にはみ出しているとして、裁判所の命令で撤去された。ところが、ラーメン店側は切断した尻尾を、近くのカニ料理店のカニの立体看板に移設した。それも、カニがはさみで尻尾を切っているような配置である。当然のように話題となり、ラーメン店は前に増して人気という▼こちらは笑えない。2度の暗殺未遂事件に見舞われたトランプ前大統領。ここぞとばかりに、大統領選を争うハリス副大統領への非難を強める。狙われたのは「民主党が自分を攻撃したからだ」と、あたかもハリス陣営が仕掛けたような口ぶりという。トランプ氏自身がハリス氏を罵倒してきたことは忘れてしまったみたい。強欲では陳忠も真っ青だろう。(熊)
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