大分建設新聞

四方山

常識は守れるか

2024年09月20日
 暑かったはずである。8月の大分市内の平均気温は29・9度と、1887年の観測開始以来、最も暑い1カ月を記録したという。熱中症で救急搬送された人たちは昨年より97人増え477人を数えた。天災の域であろう。猛暑の影響は意外なところにも飛び火したよう。血液不足だ。県内の8月の献血者は1088人。前年の4107人に比べて何と4分の1に激減した▼猛暑で外出が控えられた影響だ。そんな状況に立ち上がったのが大分建設業協会大分支部。組織を挙げて献血に協力していることが、9月3日付小紙で紹介された。手術などで必要とされる血液は、献血者の協力でまかなわれている。理想的な「善意の循環」と呼ばれるが、昭和の中ごろまで血液は「商品」というのが常識だった▼売血で生計を立てる者もいて、たび重なる供血による血球の少ない「黄色い血」や、病原体を持った血液が出回り社会問題化した。政府は1964年、売買血廃止の方針を打ち出し、完全に廃されたのは90年。26年かけて現在の献血システムがつくられ定着していった▼社会の「当たり前」が変わるのに、四半世紀の時間を要するということであろう。樹木を墓石の代わりに見立てる「樹木葬」が岩手県一関市の寺で始まって25年になる。当初はキワモノ視されていたが、伝統的な家制度が崩れ、1人世帯が珍しくなくなるにつれ次第に広がった▼今ではお墓の新規購入者の半分近くが樹木葬を選び、墓石型の墓は20%にとどまるという統計もある。「土に還る」というが、命の循環を感じられるのも魅力になっているよう。イスラム教徒用の土葬墓地建設計画に揺れる日出町では、建設反対を掲げる新町長が就任した。宗教という難しい問題をはらむ中、仏教的火葬墓が当たり前という常識は守れるのだろうか。(熊)
取材依頼はこちら
フォトkンテスト
環境測定センター
arrow_drop_up
TOP