大分建設新聞

四方山

足跡

2024年09月13日
 「足跡」と書いて、「あしあと」とも読めるし「そくせき」とも読む。「あしあと」は、人や動物が土、雪、ドロなどの上を歩いた時に残る足の跡。一方、「そくせき」と読めば、人の経歴や業績などを指す言葉となるが、なかなか日本語は難しい▼人類最古の足跡は、タンザニアのラエトリ遺跡で発見された。約360万年前の人類アファール猿人のものらしい。学者らによるさまざまな研究から、この足跡は夫婦と子ども一人の家族の歩行であるという。足跡が残された地層は火山灰層で、当時はぬかるんでいたことから、おそらく火山の噴火から逃げる途中であったのではないかと考えられている▼この時期は、先日の台風10号など大雨による被害が発生しやすいが、これまで全国各地で弥生時代以降の古い水田が見つかっている。その水田には、人や動物が歩いた直後に、洪水などによる土砂が水田を覆いつくして、当時の水田とともに「足跡」が保存されているケースが多く見られるという。足跡に異物の砂などがたまることで、保存が良ければ指先まで残っている▼現在の状況を観察すると、まず、人は裸足で歩くことはない。水田の耕作でも、必ず長靴や田植え靴を履いている人がほとんどだ。また、水田は広い面積にほ場整備され、畦畔やのり面も大きなものとなっているし、災害復旧も大型機械を使うので時間がかからず復旧できる。そのことから考えると、数百年、数千年後に足跡が残りにくい環境にある▼足跡は、犯罪に関係する印象だ。科学捜査に従事している警察官によると足跡で人の心理が読めるというが、現在は、足跡よりも靴や靴下が後世に残りそうだ▼足跡は、やはり「そくせき」を残すようにしたい。後世に、成し遂げた仕事や成果を記録に残すことで、その後の発展につなげたい。(勇)
取材依頼はこちら
フォトkンテスト
環境測定センター
arrow_drop_up
TOP