大分建設新聞

四方山

宏池会

2024年09月10日
 宏池会と言えば、自民党きっての名門派閥だ。1957年の創設。オーナーの池田勇人氏は首相の座を掴み、その後は大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一、そして岸田文雄各氏といった5人の首相を輩出した。離合集散が当たり前の政界にあって、67年の長きにわたって、派閥としての伝統を守ってきた集団は他にない。保守本流と呼ばれるゆえんだ▼宏池会の名称は、漢籍の「高光の榭に休息し、以て宏池に臨む」に由来する。「榭」とは「うてな」と読み、見晴台のこと。高いところから広大な池を眺めている情景を詠んだ漢詩で、余裕しゃくしゃくたる心情を言い表しているという。見方を変えれば「上から目線」である。他派閥から「お公家さん集団」とやゆされるのも、むべなるかなである▼同党をかつてない危機に追い込んでいる「裏金問題」。余裕などと言っていられなくなったのだろう。政治団体としての解散届を総務省に提出し、その歴史に幕を下ろした。ところが、永田町では「偽装」との見方も浮上しているという▼きっかけは、朝日新聞9月5日付紙面。解散届を提出した翌4日に、宏池会(旧岸田派)に所属していた議員らが山梨県内に集まって会合を開き、岸田氏は27日投開票の総裁選に触れてこう述べたという。「決選投票では旧岸田派で大きな塊をつくりたい」。派閥的動き以外のなにものでもあるまい▼時を同じくした6日、前代未聞のハプニングが首相官邸で起きた。林芳正官房長官が乗ったエレベーターが故障し30分間にわたって閉じ込められ、閣議に出席できなかった。林氏といえば、旧岸田派のナンバー2で、総裁選に名乗りを上げている。思えば宏池会の始祖、池田氏の首相在任中の決まり文句は「私、嘘は申しません」▼もしかして天上の池田氏の怒りだったりして。(熊)
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