大分建設新聞

四方山

言葉の暴力

2024年08月22日
 「日本や世界に一歩踏み出す勇気を与えられた」。パリオリンピックの日本選手団の旗手を務めた、大分市出身の江村美咲選手(フェンシング女子サーブル団体・銅メダル)は、解団式でそう語った。振り返れば、日本勢は海外五輪では最多となる45個のメダルを獲得した。どこかしら閉塞感が漂う日本社会にとって、久しぶりの明るいニュースとなった▼東京大会がコロナ禍に伴う無観客で開催されただけに、観客席と一体になって盛り上がる光景は、少しうらやましくも感じられた。それ以上に、直前まで激しい闘いを繰り広げていた選手たちが表彰台で、お互いの健闘をたたえ合う光景には胸が熱くなった。世界は戦禍が絶えないが、平和の祭典としての五輪の意義を信じたい気にもなる▼その一方で、パリ大会ほど、言葉の暴力が顕在化した五輪はなかった。SNS上で飛び交った選手への誹謗中傷である。「日本人としてみっともない」「引退してください」…。日本人だけではない。選手の容姿の揶揄や人種差別的な投稿が続出し、国際五輪委員会は選手村に「心のケア」の施設を開設し、傷ついた選手のケアに当たった▼選手も同じだ。パラリンピックを巡っては、日本の女子アーチェリーの代表選手が、かつて代表の座を競ったライバルのブログに「ルール違反していない?」などと中傷する投稿をしていたことが発覚した。フェアプレー精神のかけらもない▼女性タレントがSNSの書き込み上で女性お笑い芸人に不適切投稿をしてたことが明るみに出て、このタレントは休業に追い込まれた。著名人に限らない。一般人も同様だ。SNSの暴力性については何年も前から指摘されていながら、事態はますます深刻化している。悲しいことだが、SNSをやらない勇気が、最善の防御策のようだ。(熊)
取材依頼はこちら
フォトkンテスト
環境測定センター
arrow_drop_up
TOP