大分建設新聞

四方山

保戸島空襲の悲劇

2024年08月08日
 豊後水道に浮かぶ保戸島。小さな島は今から79年前の1945年7月25日、大きな悲劇に見舞われた。保戸島国民学校(現在の保戸島小学校)が米軍機の空襲により校舎が炎上、児童125人、教師2人の命が奪われた。ほかに犠牲者はおらず、戦争とは無縁の子どもたちが犠牲になった点で、ほかの空襲被害とは一線を画す▼何もB29のような爆撃機による空襲ではない。戦闘機3機の襲来で、命中した爆弾は1発だけ。にもかかわらずここまで犠牲者が増えたのは、逃げる子どもたちを機銃掃射で狙い撃ちしたからである。敗戦までわずか3週間足らず。日本に反撃する余力がないことを承知の上で、米軍機が児童を狙ったことに慄然となる▼保戸島の慰霊祭から3日後の同28日、陸上自衛隊日出生台演習場では、米海兵隊と陸上自衛隊との共同訓練が始まった。離島防衛を想定した国内最大規模の軍事演習という。領土的野心を隠そうとしない中国。台湾侵攻が現実味を帯びている中、中国をけん制する意味でも必要な訓練なのであろう▼だが、日米の関係は対等なのであろうかとも思う。米兵による性暴力事件が相次いでいる。沖縄県では昨年2月から今年5月にかけて5件発生。米軍基地を抱える全国自治体でも、米兵による性犯罪が起きていると報じられる。ひょっとして米軍はいまだ「占領軍」気分でいるのではないかとも思えてくる▼問題なのは政府の対応だ。米軍からの通報で事件を把握しながら、政府は地元自治体に通報していなかった。それ以上に捜査当局の腰が引いた姿勢は、目を覆いたくなる。米兵絡みの犯罪はほとんどが報道発表されず、沖縄の5件のうち3件は不起訴処分である。通常の性犯罪ではあり得ない。奴隷根性―という言葉が頭をよぎる。保戸島の子どもたちも浮かばれまい。(熊)
取材依頼はこちら
フォトkンテスト
環境測定センター
arrow_drop_up
TOP