大分建設新聞

四方山

低下した品格

2024年06月25日
 「幸福で礼儀正しく穏やかであり。温和(おとな)しい声で何時もニコニコしながらお喋りし、ちょっとしたことからも健やかな喜びを吸収する」。一体どこのことかと思えば、明治20年代、日本に滞在したパーマーという英国軍人が目撃した日本人の姿である。秩序正しさに「警察官は何もすることなどない」と驚きの声を上げている▼日本近代史家、渡辺京二さんの『逝(ゆ)きし世の面影』に収録されている一文である。江戸末期から明治初期にかけて来日した外国人が書き残した手記などから、当時の日本人の姿をよみがえらせた名著との呼び声が高く、読み継がれている▼そこから浮き彫りになる日本人の原像について、渡辺氏はインタビューで簡潔に答えている。「『古事記』以来、日本人は汚い心をとても嫌ってきた。神道でいう『清き心、明き心、直き心』、これこそが日本人の一番の徳目だと思います」(致知出版サイト、2022年)。いずれも失われてしまったものであろう。それゆえの「逝きし世」である▼そうした徳目は消えてしまったどころか、日本人はますます劣化してしまったようだ。東京都知事選の選挙ポスターの掲示板を巡る一連の騒動である。用意された掲示板は48人分。そこに56人が名乗りを上げた。ところが、このうち半数近くの24人が公共放送を潰すことを目的に掲げた政治団体の擁立候補だった▼あろうことか、この政治団体は割り当てられた掲示スペースを事実上、第三者に転売する挙に。選挙の商売化である。そのため全裸の写真が貼られるなどカオス状態になっている。政治団体の代表者は「公職選挙法の不備を問題提起した」と開き直るだけ。選管も問題にするような気配はない。いつからこんな恥知らずの国民になってしまったのか。見るも無惨な社会になってしまった。(熊)
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