大分建設新聞

四方山

下駄の雪

2024年06月18日
 「同じ穴のムジナに見られたくない」。自民党の裏金事件が大きな関心を呼び始めた昨年暮れ、公明党の山口那津男代表は、連立のパートナーをそうこき下ろしたものだ。だが、ふたを開けて見れば、抜本改革にはほど遠い政治資金規正法改正案を押し通した。日本維新の会が自民党に秋波を送る中〝正妻〟としての意地があったのかもしれない▼そんな公明党に、永田町界隈では「下駄の雪」という揶揄する声が再び飛び交ったという。何があっても政権から離れまいとする姿を下駄の雪にたとえた言葉だ。元は「踏まれても、踏まれても、ついて行きます下駄の雪」という都々逸の一節。田中角栄元首相が好んで口にして永田町で広まったという▼むろん、角栄氏の現役時代だから、連立時代など知るはずがない。角栄氏は「下駄の雪」の後に決まってこう続けた。「つらくても、苦しくても、我慢、我慢」。若手議員に忍耐の大切さを説く例えとして使ったという。人間通と評される角栄氏らしい。その角栄氏の研究会が自民党ではなく、立憲民主党の有志議員らが立ち上げ活動している▼発足は昨年暮れで、民主党政権時代に国土交通相を務めた馬淵澄夫衆院議員が発起人。角栄氏の政治構想力に学び、政策立案に生かすのが目的だとか。支持層のウイングを広げる狙いもあるのだろうが、よりによって良くも悪くも自民党政治の権化であった角栄氏の研究会というのは正直分かりづらい▼不可解な事態も起きている。国政選挙の行方を占う東京都知事選における、労働団体の連合の対応である。出馬表明した蓮舫参院議員(立憲民主党に離党届提出)ではなく、元自民党衆院議員で現職の小池百合子知事を支援する方針だという。「ねじれ」どころではない。連合幹部ら労働貴族の「下駄の雪」願望か。(熊)
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