大分建設新聞

四方山

ラストチャンス

2024年06月13日
 異常気象の影響だろうかと、一瞬耳を疑った。大分市の高崎山自然動物園で暮らすサルが2022年に比べて55匹も減ったというニュースである。最新の昨年11月段階の集計によると、922匹だったという。ピーク時の1995年には2128匹を数えたことを思えば、30年ほどで半減した格好である▼実は環境の変化などではない。人為的につくりだされた結果だという。サルによる農業被害の増大に頭を抱えた大分市が2001年に適正数を800匹に設定し、餌の量を減らしメスの避妊処置を通して繁殖を抑えている。市は今後も引き続き適正数に向けて取り組んでいくという▼サルの寿命は30年とされる。初産が10歳前後とすると、高崎山のサル山は3世代で半分に落ち込んだことになる。もちろん、全てのメスに避妊措置を施すわけではなく、限定的なものである。それでも、ほんの少しの外的な要因で、集団の数は短期間で急減してしまうということであろう▼厚生労働省から人口動態統計が発表された。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数は1・2人と、過去最低を記録した。人口を維持していくのに必要な出産数は2・07人とされ、その落差に驚かされる。日本の総人口は現在1億2000万人。70年には7700万人まで落ち込み、40%が65歳以上の高齢者になるとも▼「異次元の少子化対策」と、政府が豪語する改正子育て支援法などが成立した。一連の対策を打ち出すのに当たって、岸田文雄首相は「ラストチャンス」とも言った。人間には知恵があるのに、なぜもっと早く手を打てなかったのかとも思う。少子化、人口減が何をもたらすか。弊紙4月10日紙面は、建設業の人手不足倒産が前年度に比べて倍増していることを報じた。異次元の未来の先触れでないことを祈るだけだ。(熊)
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