大分建設新聞

四方山

貧乏の今昔

2024年06月03日
 「貧乏はするもんじゃあない。味わうものですな」とは、落語界の昭和の名人・古今亭志ん生(1890~1973)の言葉だ。若手時代に借金取りから逃れるために16回も芸名を変えたエピソードが有名だ。著書「びんぼう自慢」という半生記もあるくらい貧乏は切っても切れない。私なりに意訳すると「お金がなくても気の持ちようで何とかなる」くらいの意味だろうか▼落語の世界ではたくあんを卵焼きに、お茶を酒の代用にする「長屋の花見」などのように、貧乏なりの知恵と生活力で人生を楽しめる。現実世界では志ん生の語るドタバタ劇を楽しむ程度にしておいた方が良さそうだ▼その「貧乏」が奨励されている。ラジオを聴いていたらリハビリ医が貧乏ゆすりの効用を説いていたのだ。子ども時代、親に行儀が悪いと怒られたりした人も多いのではないだろうか。それが近年は、健康法や変形性股関節症を改善する運動療法として貧乏ゆすり(ジグリング)を勧めている▼効用としては、ふくらはぎがポンプの役目をし、全身の血行がよくなるので冷えやむくみに良し。また股関節に負荷をかけることなく小刻みに動かすことで関節液が循環しやすくなり、変形性股関節症ですり減った関節軟骨に栄養が供給されやすくなるらしい。ただし医学的な根拠はないので「医師に相談を」とのこと▼志ん生のように貧乏を味わえるうちはいい。「貧困をなくそう」はSDGsの一番目の目標である。現代は富裕層と貧困層に両極化する格差社会と言われ、所得に限らず雇用や教育などにも格差がある。その格差が拡大すると不平等は深刻さを増して差別につながりかねない。世界に眼を向けると極度の貧困状態にある人は6・3億人、そのうち半数が子どもだそうだ。落語のようにいかない現実がある。(コデ)
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