善隣友好
2024年05月23日
営業に欠かせないのが詳細地図だ。少々値は張るが、一つ一つの建物の居住者に関する情報が入ったゼンリンの住宅地図を備えている事業所も少なくないだろう。グーグルマップといっても、一本一本の路地を歩き、一軒一軒の建物を訪ねて収集した情報にはかなわない▼ゼンリンは本社が置かれている福岡県北九州市が創業の地だと思われがちだが、別府市で産声を上げた。宇佐市出身の大迫正富氏が手掛けた観光宣伝会社がはじまり。1949年に出版した観光冊子『年刊別府』が事業の転機になった。と言って本誌ではなく、付録として付けた住宅地図が評判となり、次第に住宅地図の編集出版に業態をシフト、今日の国内最大手の地図情報会社に成長していった▼いまでは住宅地図の代名詞になっているゼンリン。元々は「善隣」と表記した。創業者が好んだ「善隣友好」に由来している。戦時中、地図は軍事機密とされ自由に出版できなかった。つまり地図出版は平和であればこその事業であり、その大元は近隣諸国との善隣友好にある、という願いが込められている▼つい数年前まで「絶望の日韓」とまで呼ばれるほど、悪化した日韓関係。2022年に尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が誕生し、ようやく改善の兆しが見え始めた両国関係だったが、ここにきて新たな火種が生まれた。韓国の野党「祖国革新党」を率いる曹国(チョ・グク)代表が竹島に上陸し、竹島の領有権を主張する日本へ謝罪を求めた▼喧嘩を吹っかけてきたようなものである。曹氏といえば、前政権の法相時代に娘の不正入学など、タマネギをむくように数々の疑惑が噴出し、付いたあだ名が「タマネギ男」。不幸なことだが、かの国では反日を叫ぶと支持率が上がる。体よく竹島が利用された格好だ。頭の中に「善隣友好」という言葉はないと見受けられる。(熊)