先生の呼称
2024年04月11日
♪もうひとつチェルシー~。そんなフォーク調の音楽とともに、「あなたにもチェルシーあげたい」と、金髪の少女がささやくCMを覚えているとしたら、かなりの年配に限られるかもしれない。あめ玉ではなくキャンディーという言葉が広まったのは、チェルシーがきっかけだったような気がする▼初登場は1971年というから半世紀以上の歴史があるが、製造元の菓子メーカー、明治はその販売を先ごろ打ち切った。産経新聞によると、2002年度には約25億円あったチェルシーの売上高は、22年度には5分の1の約5億円にまで減ったという。チェルシーだけでなく、全体であめ・キャンディーの消費者離れは顕著なよう。取って代わったのが柔らかなグミだ▼こちらもぷにょぷにょというか、ソフトな時代を反映しているのだろうか。法務省は刑務所の大改革を打ち出した。これまで受刑者に刑務官を「先生」と呼ばせていたが、上下関係を生み出し、昨今問題化している刑務官による受刑者への暴行の温床になるとして、それを禁じ「担当さん」と呼ばせることに決めた▼俗に「先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし」と言われる。先生と呼ばれて得意になっているかもしれないが、使っている方は舌を出して軽蔑しているかもしれない。だから先生と呼ばれたら用心しろ、という戒めである。法務省もそのことに気づいたのかもしれない▼永田町はそれこそ「先生」のオンパレードである。支援者、秘書は議員を先生と呼ぶのはもちろん、議員同士も先生と呼び合う。国会内の放送は先生の呼称付きである。特権階級と勘違いする温床にもなっているよう。裏金問題で政治不信が高まり「政治改革」がお題目のように唱えられる中、まずは永田町内での「先生の呼称は厳禁」から始めては?(熊)