大分建設新聞

四方山

知事のメッセージ

2024年04月09日
 わが子を思う親の心につけこむような悪質な事件である。子どもの病気に関する情報提供をうたった「子ども難病ナビ」の運営を装い、出資会社から多額の金銭をだましとっていた臼杵市内のITベンチャー企業の元会長と元社長が詐欺罪で起訴された。同社は2019年に県のビジネスグランプリで優秀賞を受賞し、それがだましのツールに使われたとも見られている▼補助金を支出した県も被害者である。だまそうという人間の悪意を見抜くのは並大抵なことではあるまい。だが、県民の安全・安心を守る県職員であれば、細心の注意が求められるのは当然であろう。佐藤樹一郎知事は新規採用職員を前に「公務が果たす役割は大きくなっている。県民の期待に応えてほしい」と激励したのも、そうした諸々の思いが込められていたことだろう▼それに比べて、引き合いに出すのもはばかれるが、静岡県知事による新職員へのはなむけの言葉はひどすぎた。「皆さんは頭脳、知性が高い」と言うために、比較の対象に持ち込んだのが農業、製造業従事者の人たちだった▼職業差別以前に、ゆえなき「差別観」を新社会人に植え付けることが果たして責任ある大人の対応なのかと思ってしまう。この知事が自他ともに認めるリベラル派というのは、皮肉以外のなにものでもない▼「仕事の心棒は、自分以外の誰かのためにあると、私は思う。その心棒に触れ、熱を感じることが大切だ」。そんな新社会人向けのメッセージ入りの広告が4月1日付けの一部新聞に掲載された。サントリーの恒例の企画広告である。筆者は昨秋他界した作家、伊集院静氏。2000年の第1回原稿の再掲だった。粋なことをするものだ。その文章には人生の先輩としての後輩への思いやりがある。静岡県知事の悪意とは真逆のものだ。(熊)
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