大分建設新聞

四方山

評価

2024年03月15日
 大相撲三月場所が始まったなか、「相撲列車」が廃止されたことを、朝日新聞3月9日付の記事で知った。大相撲の年六場所のうち三月(大阪)、七月(愛知)、十一月(九州)の各場所に当たっては、力士たちは団体で移動していた。多い時には数百人の力士、関係者が同じ新幹線の車両に乗り込んだ。グリーン車に座れるのは十両以上の関取衆だけ。番付社会の厳しさだ▼続々とホームに降り立つ力士たちの姿だけで絵になった。そして、駅構内に漂うどこか官能的なびんつけ油の匂い。力士が団体で乗り込む新幹線は「相撲列車」と呼ばれ、場所開幕と新しい季節の訪れを告げた。コロナ禍で一時中断され昨年の愛知場所で復活したが、結局、九州場所を最後に取りやめとなった▼コロナ禍で部屋ごとに移動するスタイルが定着したことが廃止の背景にあるという。人間とは勝手なもので、なくなったと聞くと、相撲の風物詩が一つ消えたようで寂しさを覚える。歌手の一青窈(ひとと・よう)さんの「大家(ダージャ)」という楽曲にこんな一節がある。「失ってはじめて気付くこともあるけれど/もうもとには戻れない」▼父の死をモチーフにした作品だが、そこに込められているのは、この世の真理のような気がする。「ドラゴンボール」で知られた漫画家の鳥山明さんが他界、享年68。初期の「Dr.スランプ」は読んだ記憶はあるが、その訃報が新聞の1面を飾るとは思ってもみなかった▼国内はさることながら海外で高く評価されていると知り、自分の不明を恥じた。フランスのマクロン大統領も熱狂的なファンだったと報じられた。漫画という共通言語が日本と世界を結んでいた。亡くなってはじめて知る、鳥山さんの業績の偉大さ。これから漫画の枠を越えて、文化の伝説として語り継がれていくのだろう。(熊)
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