大分建設新聞

四方山

十纏無残

2024年03月05日
 不勉強であったが、岐阜県に岐南町という自治体があることを初めて知った。岐阜市の南に位置し、ベッドタウンとして発展してきたという。人口3万人弱の町が一躍有名になったのは、現職町長のセクハラ問題。2020年の町長選でわずか4票差で対立候補に競り勝ち、念願の町長のイスをつかんだというのに自滅した▼女性職員に「手相を見たる」と言って手をなでたり、お尻を触ったりと好き勝手放題だったよう。人間は百八の煩悩を抱えているというのは仏教の教え。弁護士らで組織する第三者委員会は、それに九つ少ない99件の町長の振る舞いをセクハラ行為と認定した▼当初は「こちらも被害者」と開き直っていた町長も最後は白旗を揚げた。煩悩の一つ一つに名前が付けられており、九十九番目のそれは「十纏無漸(じってんむざん)」。「自分に対して恥じる心がない」という意味といい、妙に重なる。煩悩まみれといえば、自民党の裏金問題に揺れる永田町であろう。党総裁でもある岸田文雄首相は火消しに追われるが、連発する「強い覚悟を持って」という言葉は「空念仏」に響く▼タイミングが悪すぎる。時あたかも確定申告のシーズンである。経営者ならずとも庶民もこの季節、1円単位の計算に追われる。切手1枚であっても領収書がなければ支出として認められない。ちょっとしたミスだって、追徴課税の憂き目にあうことだってある▼「政治資金」が非課税であることを隠れ蓑に、問題となった政治家たちは裏金についても「政治活動に使った」と逃げ切る算段のようだ。使途は高級店での食事代などである。中には同じ書籍を何千冊も購入していた猛者も。どこが政治活動なのか。岸田首相は国民に向けて「適切に納税、申告をお願いしたい」と呼び掛けるが、相手を間違っているのではなかろうか。(熊)
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