大分建設新聞

四方山

TSMC

2024年03月04日
 世界最大手の半導体受託製造企業TSMC(台湾積体電路製造)熊本工場の開所式が2月24日、熊本県菊陽町で開かれた。式典には創始者の張忠謀氏をはじめ台湾の同社幹部、日本からは斎藤健経済産業大臣ら政府、財界関係者が多数参列したほか、岸田文雄首相がビデオメッセージを寄せた▼経済安全保障の観点などから日本政府が4760億円という巨額の補助金を外国企業に与えるという破格な扱いである。さらに計画が発表された熊本第2工場には補助金7320億円を投入する。この二つの工場に対する日本政府の補助金は最大1兆2000億円にも達する▼既に熊本県では、地価・賃金上昇などTSMCバブルともいわれる現象が起きており、その進出が黒船来航に例えられるほどだ。しかし懸念もある。半導体製造に欠かせないのが大量の水。同社では1日8500㌧の地下水を予定しており、操業が進むと水不足が心配されている。同県の予測では水位低下は局所的には起こるとみている。同社に出入りする自動車の増加で交通渋滞も心配されており、黒船来航という表現はそれほど大げさではない▼生産される半導体は回路線幅が12、16、22、28㌨(㌨は10億分の1㍍)といわれており、スマホや自動車製造で需要が多い。世界水準でみると最先端ではない。台湾内の工場では既に3ナノを生産している。それでも日本に工場を開設する意味は、まさに中国を見据えた地政学的視点からだ。同社は米国、ドイツへの工場建設を計画しているが、進んではいない▼その点から見て、熊本工場の開設はその一貫であり、早急に開設された点も理解できる。ただ単純に補助金1兆2000億円を全人口で割ると、1人1万円。国民負担は決して小さくない。それだけに今後注視していかなければならない。(ゴウ)
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