大分建設新聞

四方山

日本食い

2024年03月01日
 「辰巳天井」。そんな言葉を1月12日付の本欄で紹介した。辰年は株価が上がり天井をつき、巳年で跳ね上がる…という証券業界で語り継がれる相場格言である。年明け早々ここまでいくとは驚きである。2月22日の東京株式市場は日経平均株価が3万9098円で取り引きを終え、史上最高値を記録した▼高値更新はバブル経済期の1989年12月29日以来、実に34年ぶりのことである。バブル崩壊後「失われた30年」と言われ長らく低成長時代が続いていたが、日本経済も長かったトンネルからようやく抜け出たのだろうか。私ごとになることをお許しいただきたい。かろうじてバブル景気を体感した世代であるが、当時の社会を覆っていた高揚する気分は感じられない▼全国でリゾート地などの開発ラッシュが続き、日本企業による米国企業の買収が相次いだ。米国のシンボルと言われたロックフェラーセンターまで日本企業の傘下に入った。金融資産も右肩上がりだった。ところが今はどうだろうか。記録的な円安で、物価は右肩上がり。一方の収入は横ばいである▼要は、円安を背景に海外の投資家が「日本買い」に走っている、というのが実相ではないか。実体経済をみれば、3位につけていた日本のGDPはドイツに抜かれ4位に転落した。1人当たりのGDPでみたら、日本は21位で、勢いから見れば22位の韓国に早晩抜かれても不思議でない▼いけない。明るい話題は…と見渡すと、あった! びろうな話だが、万博のデザイナーズトイレに2億円が投じられる。大阪府の吉村洋文知事は「トイレに魂を吹き込む。高額でない」と胸を張るが、万博が終われば撤去である。当初計画の約2倍となる会場建設費の2350億円に比べれば大したことないのだろう。「日本食い」の言葉が頭をよぎる。(熊)
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