大分建設新聞

四方山

隠語

2024年02月28日
 結局、日本相撲協会の体質は変わっていなかったということなのだろう。将来の横綱候補という呼び声もあった、大相撲の幕内北青鵬が引退に追い込まれた。宮城野部屋の部屋頭でありながら、後輩力士を殴るなどの暴力行為を日常的に繰り返していた。時には火で体をあぶるようなこともあったらしい▼大相撲を巡ってはこれまでにも何度となく暴力問題が取り沙汰され、そのたびに協会は再発防止を誓ってきた。「かわいがり」の体質が染みこんでいるのだろう。元々は心身鍛練のため厳しく稽古することを指す隠語だったが、いつの間にか「いじめ」の意味に取って代わってしまった▼内々だけで通じる隠語。そこに腐敗の要因がある、と言い出したのは日本相撲協会ではない。全国の刑務所を統括する法務省である。刑務官による受刑者への暴行事件を受けて。再発防止策として掲げた。刑務所内では刑務官同士、独特の隠語を使っていた。身柄は「ガラ」、散髪は「ガリ」、食器を下げることを「カラサゲ」などといった具合だ▼こうした刑務所内でしか通用しない言葉の一掃を、小泉龍司法相は指示した。「言葉のゆがみが虐待を誘発しかねない」と持論を記者団に説いたという。もっともである。では、国会をにぎわせている自民党の政治資金パーティー裏金事件を巡る「政治倫理審査会」はいかがなものであろうか▼自民党も政倫審の開催を渋々了承したが。傍聴も認めず、議事録すらも非公開とする「完全非公開」での開催を求めているという。一体何のための政倫審なのか。それこそ倫理のかけらもない。開くこと自体を一連の問題のけじめにしたい意図が垣間見える。国民への説明責任など眼中にないのだろう。これこそ、言葉のゆがみが国民の政治不信を誘発しかねないのではあるまいか。(熊)
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