記憶にない
2024年02月22日
世界最大の経済力に軍事力とくれば米国である。善し悪しは別にして、今日の国際秩序の枠組みは、この超大国によってつくられている。米国のみならず「世界のリーダー」と呼ばれる米大統領。選挙を11月に控え、前哨戦が過熱している▼民主党のジョー・バイデン大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領との対決となる公算が大きいと見られてきたが、雲行きが怪しくなった。バイデン氏の81歳という年齢問題がクローズアップされてきたからだ。きっかけはバイデン氏の機密文書持ち出し疑惑を捜査していた特別検察官の報告書である▼訴追断念の理由として「バイデン氏の記憶が限られており、副大統領を務めた時期や、息子が死亡した年も記憶してなかった」と記されていた。にわかに、81歳という高齢で大統領の重責に耐えられるのかと不安視する有権者が増えているという▼無比の同盟国を自認する日本でも、盛山正仁文部科学相を巡ってその適格性に、野党から疑問の声が上がっている。バイデン氏よりも一回り近く若い70歳だが、問われているのは記憶力である。旧統一教会の関係団体から推薦状の授与があったとされる問題で、国会答弁は「受け取ったかもしれない」「うすうす思い出してきた」などと迷走。最近では「記憶にない」を連発している▼大臣としての適格性もあるが、問われているのは政治家としての誠実さであろう。経歴を見れば名門高から東大法学部を経て官界に。絵に描いたようなエリート街道である。盛山氏だけでない。裏金事件では華々しいキャリアを積んだ政治家たちが「記憶にない」を決め込む。「政治家に徳目を求めるのは、八百屋で魚をくれと言うのに等しい」と言ってのけた元法相がいた。昭和の話だが令和になっても変わらないとは。嘆かわしい。(熊)