与那国島
2024年01月29日
沖縄県与那国町は国境の島で日本の最西端に位置する。台湾から111㌔ほどしか離れておらず、1年に1週間ほどだが、空気が澄んだ時は台湾が見えることがある。かつては「渡難(どなん)」と言われ、波が荒い外海の中の孤島だった。テレビドラマや映画にもなった「Dr.コトー診療所」の舞台となった志木那島の屋外ロケ部分は与那国島で撮影している。以前はよく訪れていた。美しい海が印象的でのどかな島だ。しかしここ10年ほどは世間を騒がせている▼島を二分する住民投票で賛成が多数を占めて陸上自衛隊の受け入れを決め、2016年3月与那国駐屯地が開設されて以来、島の状況は一変した。沿岸監視隊などが配置され、150人ほどの隊員が勤務している。家族を含めると200人近く人口が増えて、開設前の島の人口1500人ほどが1700人規模になり、町民税が豊かになり財政を潤した▼さらに新たな部隊配備の話が持ち上がっている。地対空ミサイル部隊の増設だ。22年末に政府が決定した防衛3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)で反撃能力の保持が盛り込まれた。それを受けて23年1月にミサイル部隊の配備計画が町側にも伝達された。同年5月には防衛省による住民説明会が開かれ、中距離地対空ミサイル部隊を配備するとし、反撃能力の強化を図った。配備時期や規模は未定という▼緊迫の度合を強めている台湾有事を見据えた備えとみられている。いったん有事が発生すれば、尖閣諸島も無傷ではいられない。魚釣島から与那国は150㌔の距離にあり、台湾も近い与那国島付近の海域も封鎖され、制海・制空権も脅かされる恐れがある。町は住民避難計画やシェルター導入も検討中だ。島民たちにとって、未来を描くのは容易でなくなっている。(ゴウ)