大分建設新聞

四方山

派閥

2024年01月23日
 野生動物のふんが発酵し火災の原因になり得ることを、大分合同新聞1月20日付紙面の特ダネ記事で知った。竹田市内の山間の集落で起きた民家の全焼火災の原因が、ムササビのふんや巣が発酵して自然発火したと見られているという。不謹慎であるが、こちらの方は長年の自民党派閥政治の「しがらみ」が発酵したのかという思いが頭をよぎる▼「目白御殿」と呼ばれた、東京の田中角栄元首相の邸宅が全焼した。権勢を振るった田中氏の権力の象徴でもあり、自ら「日本の政治は目白で決まる」と豪語したように、さまざまな政治の舞台となった。下馬評を覆し福田赳夫氏を破り、自民党総裁選を制した折は、目白御殿が司令塔となり「田中軍団」の異名を持つ自派の議員が票のとりまとめに奔走した▼ロッキード事件で失脚した後も「数は力」とばかりに、大派閥を維持し「目白の闇将軍」として権力を振るった。一方で、子飼いの竹下登氏が宰相を目指し、田中派を割って新たな派閥を結成した際には、挨拶に訪れた竹下氏に門前払いを食らわし、怒りを露わにしたこともあった。派閥政治の舞台であった▼時あたかも、自民党の政治資金パーティーに絡む裏金事件に端を発し、問題の震源地となった最大派閥の安倍派はもちろん、二階派などが派閥解散に踏み切った。線香の不始末が原因とされる旧田中邸の全焼火災は「派閥政治」の終焉を象徴する出来事のようにも感じられる▼驚いたのが岸田文雄首相までが党内第4派閥の自派の解散を踏み切ったことだ。存続を摸索する第2派閥の麻生、第3派閥の茂木の両派は守旧派と目されかねない中、岸田氏は党内基盤を強固にする好機を手中にしたというのが永田町筋の見方だ。決められないと皮肉られる岸田氏の決断らしい決断がこれだけでは少々寂しい。(熊)
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