大分建設新聞

四方山

安全とコスト

2024年01月18日
 高齢者ではなく、幸齢者になろう。そんな呼び掛けをしているコメディアンがいる。上方喜劇界を代表する大村崑さんだ。御年92歳。86歳で筋トレを始め、今では筋骨隆々。見るからに病気知らずの体だが、若いころ結核を患い、右の肺を切除している。健康であることのありがたさを知ればこその言葉なのだろう▼大村さんの出世作は1958年から放送されたコメディ『やりくりアパート』。ドラマよりも番組内のコマーシャルが受けたらしい。商品名の「ミゼット」の連呼に茶の間は爆笑の渦に。ミゼットとは、ダイハツの軽自動車規格の三輪トラック。崑ちゃんの掛け声に連れられて売れに売れたという▼ミゼットの成功が基盤となり、国内軽自動車販売では17年連続の業界トップ。そのダイハツが岐路に立たされている。89年から34年にわたって安全性能確認試験で不正を繰り返していた問題である。昨年末から全車種の出荷が停止された。中津市内には国内車両生産の半分を担うダイハツ九州の大分工場がある。操業を開始して20年を迎え、4200人の雇用を生み出している▼中津市の法人住民税収入の2割は自動車関連企業とも報じられる。県内には89社のサプライチェーンがあり、操業停止が県経済に及ぼす影響は計り知れない。なぜ長期にわたって不正が行われていたのか。同社の経営スローガンは「低コストで良質な自動車を提供するため、1㍉1㌘1円1秒にこだわる」。無理は生じなかったのか▼大分空港と大分市を結ぶホーバークラフトの運航会社は、今年度中としていた運行開始時期を秋に延期する考えを明らかにした。昨年11月に操縦訓練中に起きた事故の影響だ。安全運航の訓練をきちんと実施したいとしている。安全にコスト感覚を持ち込まない―。まっとうな判断であろう。(熊)
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