夢のようなハナシ
2023年12月22日
師走も後半を迎え、少し年末らしくなってきた。日本気象協会のHPによると、西日本太平洋側では1月は「平年に比べ晴れの日が少ないでしょう」という予報が出ている。大分市の31日の天気は「晴れ時々曇り」気温16度。元旦は「曇り時々晴れ」気温17度である(12月22日現在)▼かつて筆者の大晦日は行きつけの酒場で仲間と一緒に「紅白」を横目に飲み、暖簾を下ろした店主、常連とともに近所の神社に初詣というのが恒例だったが、それもコロナ禍で中止。帰郷した2021、22年の大晦日はどう過ごしたか…夢のようにはかない記憶だ▼テレビの人気は下降気味だが、31日は特番が多い。今年も7年連続でドラマ「孤独のグルメ大晦日スペシャル」が放送される。主人公・井之頭五郎は下戸の設定で酒場が舞台になることもあるが、いっさい飲まない。代わりに筆者が飲んでやろうかと思う▼落語好きには「芝浜」が暮れの定番演目だ。棒手ふりの魚屋で大酒飲みの勝五郎が海(芝浜)で拾った財布の大金で仲間に大盤振る舞いをするが、ひと眠りして目覚めると、女房は「夢を見たのよ。財布なんか拾っていない」と諭す。勝五郎はそれから一念発起して禁酒し、真面目に働いて店を大きくする。ある大晦日、とうとう女房が実は財布を拾ったのは事実で、あなたのために嘘をついたと告白。夫は怒るかと思いきや妻の賢明さに納得。元旦も近い、酒を飲むかと問われ手を出しそうになるが「よそう。また夢になるといけねえ」というサゲ。古今亭志ん朝が十八番にした、夫婦の愛情を描く有名な人情噺だ▼今の幸せが夢にならないようにという思いで酒を断る。分かっていてもなかなかできない決断だ。これをやせ我慢と見るか、女房への愛情と見るか、年の瀬に相応しい含蓄に富む噺だ。(コデ)